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第三章 世界最先端技術系の科学者たちが研究している

【官民共同で糖鎖を研究】

経済産業省もヒトゲノム解読後の重要プロジェクトとして27億円を投じ、ガンや免疫に関する糖鎖の研究を進めています。糖鎖は多くの病気の発症に関係していることから、次世代バイオの主役になるとも言われ、先進国間で研究競争が活発なため、官民が一体となって取り組む姿勢をとっています。プロジェクトには、経済産業省の産業技術総合研究所を中心に、医薬品メーカーや大学が参加し、糖鎖を合成する酵素遺伝子をヒトゲノムデータの中から見つけ出すため、共同研究を行っています。また、糖鎖合成に関係する酵素は、数百種と言われており、大半の遺伝子について特許の取得を狙っているといいます。

北海道電力などが設立した、生物有機化学研究所と協力、移植医療に使う軟骨細胞の培養材料としての応用も進めています。更に、東洋紡などと共同で臨み、糖鎖自動合成装置「GOLGI(ゴルジ)」を開発しました。これは糖鎖工学を推進する強力な道具になるでしょう。現在、情報技術(IT)などと並んで注目を集めているナノテクノロジー(超微細技術)と、分子レベルで相手を識別する糖鎖の性質をうまく組み合わせることにより、微量物質を同時検出できるなど、ユニークな機能を持つバイオセンサーが実現しそうです。

糖鎖の研究は、北大のほか、鳥取大学や東海大学も取り組み始めました。産業技術総合研究所(旧工業技術院)は、糖鎖工学研究センターを茨城県つくば市と札幌市にも開設しました。糖はゲノムを構成するDNA(デオキシリボ核酸)の塩基や、たんぱく質を作っているアミノ酸より構造が複雑です。更に、糖同士のつながり方には何通りもあります。こうした糖鎖を相手に、日本の研究者は多くの実績を上げてきました。しかし最近、多くの先進国が糖鎖の研究プロジェクトをスタートさせ、国際競争は更に激しくなろうとしています。

【爆発的に成長する糖質科学研究】

Glycobiologyが創刊されてから約10年後、Acta Anatomika、 International Journal of Anatomy Embryogy は1998年に、糖質科学分野における最新の研究を特集しました。この著名な学術誌は、ブラジル、フレイブルク、パリ、ロンドン、ニューヨーク、ニューデリー、バンコク、シンガポール、東京、シドニーで出版されています。編集者は次のようなコメントを載せています。

『複合糖質の生物学的役割に関する研究は、ここ数年間で素晴らしい成果をもたらした。この研究は、生物学や医薬品、免疫学だけでなく、細胞生物学全般、発達生物学、生殖生物学、そして神経生物学…の全ての分野に足跡を残した。研究に携わっていない人は、急速な知識の進歩についていけなくなってきている』と。

国立図書館の医学系データベースMEDLINEで「糖たんぱく質」をキーワードとして検索すると、英語で書かれた科学論文は1960年代の初期には全くなかったものが、2000年には7800にも及んでいます。外国語で書かれているものを含めると、その数はもっと多くなるでしょう。例えば、ある学者によれば1998年には全世界で2万件もの論文が発表されています。糖質生化学への興味が驚くほど大きくなったのは、細胞表面の複合糖質が、身体のあらゆる場面で起こっている機能において、重要な働きを担っていると認められたからです。

【健康における炭水化物の重要性】

上述した1998年版のActa Anatomika で編集者はこの「生物学的情報を持つ糖の暗号」の重要性を述べています。

糖質は最も一般的なたんぱく質や脂肪の修飾状態ですが、その生物学的意味は長い間軽視されてきました。しかし、過去10年間で、生物学的情報を持つ糖の暗号に対する共通の理解ができたとしています。