K・リゾレシチン投与による脳内ホルモンの分泌量、認知症、記憶改善、脳内海馬の組織学的変化に対する研究
鈴鹿医療科学大学大学院・保健衛生課
健康科学博士(元) 教授 具 然和
協力:医学博士 神津健一
【研究目的】
・現在65歳以上の人口の20%は痴呆になると言われ、現代の社会問題となっている。
・認知症老人の約70%がアルツハイマーと考えられ、症状としては、神経伝達物質であるアセチルコリンなどの脳内ホルモンの減少があるが、これらの症状を治す薬は未だ開発されていない。
・本実験では、K. Lysolecithin をICR、およびSAMマウスに経口投与することにより脳内ホルモンであるノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンの血中濃度がどのように変化するのかを測定した。
【Morris水迷路実験とは?】
・薬物投与による実験動物の空間認知記憶の変化を評価する実験である。
・円形のプールに透明なプラットホームを水面下1cmの高さに設置する。プラットホームが透明であるため、視覚的にとらえることができないので、実験動物は周囲の景観からプラットホームの位置を認知・記憶して学習していく。繰り返し実験を行うことでプラットホームへの到達時間は短縮されていく。
【K.Lysolecithin とは?】
レシチンを酵素により加水分解して、脂肪酸を取り除き、低分子化したものをLysolecithinといい、これに特殊栄養素を加えたものをK.Lysolecithinという。
<特徴>
・SAMマウスについては同時にMorris水迷路実験を行った。これらの実験によりK.Lysolecithinが脳に与える影響についてアルツハイマーなどと関連させながら検討を行った。
【研究方法1】
●実験動物
ICRマウス、♂、4週齢 (1群40匹×2群の計80匹)
SAMR1マウス、♂、3週齢 (1群6匹×2群の計12匹)
SAMP8マウス、♂、3週齢 (1群6匹×2群の計12匹)
●使用食品:K. Lysolecithin
●使用機器:セロトニンEIA kit (LDN)、 ドーパミンEIA kit (LDN)、ノルアドレナリンELISA kit (ICN)
●Morris 水迷路実験用装置:ICR・SAMマウスを購入後、1週間予備飼育
●予備飼育後より4週間経口投与および全群体重測定
投与群:K. Lysolecithin (500mg/kgの割合) 非投与群:水(K.Lysolecithin 群と同量)
●ICRマウス
投与前、投与終了4、8、12週間後の計4回採血
●SAMマウス
投与終了4週間後から7日間Morris 水迷路実験 Morris 水迷路実験終了後心臓採血
●各種ホルモンの測定
【組織学的変化】▼
【考察1】
体重測定:
ICRの体重に有意差は見られなかったため、K.Lysolecithin に毒性はない。
SAMP8においてはK.Lysolecithin 投与群の体重の方がControl群よりも有意に高かったのはK.Lysolecithin が栄養補給、脳内ホルモンの補完による代謝の促進、免疫増強などに関与したことで、体力が維持されたものと考えられる。
Morris水迷路実験:
K.Lysolecithin 投与群の方は一定の時間短縮を認めるが、Control群の方では個体差が多いことから、K.Lysolecithin 投与により脳内ホルモンが増大し、神経系が恒常的に維持されたため記憶力および学習能が向上したものと考えられる。
【考察2】
ホルモン測定
1、K.Lysolecithin 投与群のほうが血中セロトニンの濃度が高いことから、神経伝達機能が向上し、また感情が安定しているものと考えられる。
2、K.Lysolecithin 投与群のほうが血中ノルアドレナリンの濃度が高いことから、神経系・内分泌系を円滑にし、集中力、記憶力が向上しているものと考えられる。
3、海馬の組織学的変化: K.Lysolecithin投与により神経細胞減少が抑制され、記憶改善に有効であることが示唆された。
4、K.Lysolecithin は投与3ヶ月後に最も効果が現れ、時間の経過とともにその効果は減少するものと考えられる。
K.Lysolecithin は神経細胞の伝達物質の刺激によって安定するものと考えられる。